「ケ〆とはじめ -鶴の恩返し-」

鶴子さん、わたしは、オレンジでしたね。

徳永真夕子さま


  
「鶴子さんとは6年ほど前に、「横浜そごう」で行われた

京都展の催事で初めてお会いしました。

 

私は着物関係の仕事をしておりまして、

お客さまからいつも「ない藤」さんの先代のお話は伺っていました。

 

当時の私にとって、憧れのおはきものでしたので、

このときは念願かなって伺った、という感じでした。

 

初めて鶴子さんにお見立ていただいたのは、白の台に花緒の裏が真っ赤な装履。

華美すぎることなく、品があってシンプルな表情でとても気に入っています。

今でもお茶会などに履いて出かけています。

 

この日は装履だけお願いするつもりだったのですが、

ディスプレイされていた可愛い下駄に目が留まりました。

 

中が空洞になっていて、「ポコ、ポコ」と愛らしい音が鳴るんです。

 

鶴子さんには、

「ポックリの形や後丸は、どちらかというと舞妓ちゃんなどお若い方が履くのよ。

芸妓さんになると甲平下駄(右近)を履くから」

と、アドバイスをいただいたにも関わらず、

私はどうしても音の鳴る舟底のぽっくりから目が放せなくて……。

 

言うことも聞かずいただいてまいりました。

 

その日はとても気さくにいろいろなことを説明してくださって、

楽しいひとときだったことを覚えています。

 

それをご縁に、京都のお店にもお邪魔するようになりました。

 

巾着型の装履入れは、オレンジと黒の配色を私にと選んでくれました。

 

そういえば、甲平下駄を薦めてくださった時も、

鶴子さんは私にオレンジの紬地の花緒がついたものを薦めてくださいました。

 

私にはオレンジのイメージがおありだったようです。
  

  
今日は濃紫のロービキの台に、玩具尽の花緒に乗って参りました。

 

ロービキは汚れにくくお手入れもしやすいので、

とても扱いやすく重宝しています。

 

日々をきもので生活していますので、

このお草履も紬と合わせて毎日のように履いています。

 

「ない藤」さんの装履は履きやすいので、

自然と登場回数も多くなります。

 
 

撮影/緒方亜衣
取材・文/笹本絵里