「ケ〆とはじめ -鶴の恩返し-」

四方山話し-3

赤と黒の艶と粋

 

赤と黒。一見、個性的なようだが、周りを引き立てるとびきり使いやすい一足。

 

女将は、小紋や紬を合わせ、近くのお寺へ孫と遊びに出かける時や、楽しくお食事に出かける時に使用していた。

 

『ない藤』一押しの組み合わせでもある。
白に丹頂花緒のはきものは、晴れの日にも日常にもご利用いただける最高の定番だが、
次の一足を考えるならば、ご普段使いに赤か黒。

 

赤と黒のトー ンはとても似通っていて、モノクロの写真で比べると
静かなトーンであることがわかる。

 

赤という色の力にはいつも感服する。
西洋の赤と日本の赤の違いは、自己主張する赤と周りを引き立てる赤の違い。

 

全ての目線を惹きつける。そんな強い西洋の赤に対して、周りを明るく、そして華やかに彩る日本の赤。

 

随筆家故岡部伊都子さんは、ない藤のはきもののトレードマーク、

 

御身を守る前つぼの赤い「きゝ紅」をこよなく愛してくださった。

 

安全と成就を願って家を出る。無事に家に戻り、はきものを脱ぎ、家に上がる。

 

後ろを振り返り、はきものを揃え感謝の念に出会う。赤が起点となる。

 

白赤黒は装いの三原色。

 

花札のモダンさは日本の洒落っ気。粋で艶もある。

 

粋を関東では「イキ」、関西では「スイ」と呼ぶと聞いた時は、ハッとした。

 

好みの違い、感覚の違いが音に表れるとはまさに「粋」な感じ。

 

その白黒赤が組み合わさったこのはきものには、様々な「粋」が詰まっている。