ない藤モノがたり

花ごころ

はきものはお身をいかす器か。

けじめ

足もとをみる・お大切に

用のこころと秘められたお望み

それぞれに趣があ・うんの

呼吸に出会う

「花ごころ」伝承

履物考

履物とは何でしょうか。

先代である「ない藤」第四代店主は、
「履物は、花を生かす器」と言いました。
お足は、つぼみを育んできた根っこ、
お足元を大切に、と。

「ない藤」では、下駄を「木履」、草履を「装履」、
鼻緒を「花緒」と書き慣わします。
これは、わたくしどもが日々の暮らしと
生活の道具に対して
ひとかたならぬ思い入れを言霊として込めて
いるからです。

身体を受け止める器である装履は、
大地と人の間だけでなく、
人と人の関係においても、拠るべき「座」としての
役割を果すのです。

採寸について

「ない藤」ではお客さまのお足の採寸を行っております。
これは、お客さまとわたくしどもが
対話を始めるための大切な準備です。

人の足には、指の長短、細太、幅と骨張り、
肉づきなど、各人各様の特徴があります。
わたくしどもでは、お客さまのお足の特徴を
詳細に採寸し、記録しております。
また、お足を拝見しながら
さまざまなお話を伺うことで、
お客さまの秘めた想いを感じ取ることが
できればと考えております。

そうしてお一人お一人に合わせて
誂えさせていただく履物は、
「足裏が酔う」フィット感と評判いただいております。

おはきもの選び

「多くの履物のなかから
どのようにして選ぶのが
よいのでしょうか」
そうしたご質問に対して私どもは、
お使いになる場面でのご自身の格調を
整えていただくことを大切に、と ご案内しております。

その場面とは、大きく分けて3つあります。
まずは、格調が高く、ご自身が主役である日。
次に、こちらも格調が高く、
しかしご自身は少し控えたお立場である日。
そして、それらの「ハレ」の日に対して
「ケ」、つまり日常です。

ご自身がどのような場面で、
どのようなお立場でお使いになるか。
それを明確にしたうえでお誂えになることで、
永く広くご利用いただくことができます。

色やデザインのお好みに沿うだけでなく、
その時、その人、そのお席の格調と調和し、
ご自身の存在感を活かす履物。
そのような “よりしろ” としての
履物選びをご提案しております。

足はひとなり

お足を拝見すれば、その人がわかります。

足は五体の受け皿であり、
天と地の間に人間をつなぐ要の器官。
古来けじめを大切にする日本人の精神は、
足と履物に特別な意味を見出してきました。

職商人

「職商人」とは、商人でありながら
職人として手仕事をする形態のこと。
モノの作り手である職人が、お客様と直接出会い、
お客様の秘めたお望みを 直接モノに込める。
「ない藤」はモノと人が語り合う舗です。

確かな技を持ち情熱を秘めた職人が
日々を心豊かに、感謝の気持ちを持って
暮らす中で工夫や美意識が育まれます。
その心づくしの手仕事が、美しい日常の名品に
時を超える命を 吹き込むのです。

ない藤の今昔

わたくしどもの祖先は、丹波国守護内藤備前守正之で、『応仁記』に「安楽院より上は、内藤備前守、是も三千計にて堅めたり」とあり、新町寺之内を上ったところに館がありました。文正元年(1466年)に応仁の戦乱で消失しましたが、
その跡は今も「内藤町」という町名で残っています。

明治8年に重兵衛門が木材と織物の商いを創め、
その残り物で下駄を作ったのが始まりです。
明治30年には北野の紙屋川近くで履物屋を開業、
その後支店のあった現在地(祇園縄手四条下る)に
移り、現在に至っております。

虫籠窓(むしこまど)とウダツが特徴的な建物は、
京都市より「歴史的意匠建造物」に指定されています。
月日を刻んだ木材の深い色合い、
並んだ黒瓦が奏でる小気味良いリズム。
昔の面影を今なお残す美しい京町屋。
京都にお越しの際は、ぜひ一度お立ち寄りくださいませ。